【連載:ダンチな人々vol.3 建築士・鈴木恵理子さん(前編)】思い出の団地が未来への挑戦の舞台に
- oizumihayaka
- 6 日前
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更新日:11 分前
団地にかかわるステキな人に会いに行くシリーズ〈ダンチな人びと。〉
第3弾は、団地を未来につなぐ”デザイナーズリノベーションの最新プロジェクト「凛-rin-」のデザイナー、建築士の鈴木恵理子さん。新潟を拠点に活動する鈴木さんが、どうして千葉市・花見川団地のリノベーションを手掛けているのか、団地への特別な思いなどを、「凛-rin-」施工中の現場におじゃまして伺いました。

千葉県の花見川団地にある一室をリノベーションしている建築士・鈴木恵理子さん。実は、鈴木さんは幼少期にこの団地で暮らしていたそうです。現在は新潟で設計の仕事をされながら、かつての住まいだった団地を再び訪れ、リノベーションというかたちでもう一度関わることを決意されました。
「子どものころの花見川」と「建築士として見つめ直す花見川」——その間にはどんな想いの変化があったのでしょうか。
今回の〈ダンチな人びと。〉では、前半で、鈴木さんが「なぜ団地にもう一度関わろうと思ったのか」後半で、実際のリノベーションを進める中で見えてきた「団地のこれから」についてお話を伺いました。
幼少期の思い出がいっぱいの花見川団地に、もう一度かかわりたい
—なぜ、花見川団地にもう一度関わろうと思ったのですか?
私は幼い頃に花見川団地で育ちました。住棟裏の芝生で補助輪なしの自転車を練習して、ガス管のコンクリート印に激突して骨折したのも(笑)、いい思い出です。外に出れば同年代の子どもがわんさかいて、毎日がちょっとしたお祭りのような時間でした。
その後、父の地元・新潟へ引っ越しましたが、ずっと花見川のことが気になっていました。Googleマップで昔のお店を探しては「ここ、今は床屋さんになってる!」なんて一人でニヤニヤして。7年前に父を亡くしたとき、「これからは好きなことをして生きていこう」と思い、そのとき最初に浮かんだのが、“もう一度花見川団地に行ってみたい”という気持ちでした。

ー実際に訪れてみたとき、どんな印象でしたか?
久しぶりに訪れた団地は、かつての賑わいが消えていて、少し寂しかったです。子どもの声も少なく、芝生の一部は駐車場に変わり、空き家も目立っていました。建築の仕事をしている私には、それが他人事には思えませんでした。
「せっかく一生懸命つくられた建物なのに、古くなったら放っておくなんてかわいそう」
そう感じたことが、団地にもう一度関わろうと思った最初のきっかけです。
ドキドキしながら飛び込んだ団地の世界。経験と技術を活かして、あたらしい挑戦へ

ーそこからどう行動を起こしたのですか?
そんな時に出会ったのが「団地女子会」でした。ビッグサイトで開催されていたイベントを見つけ、「ここ!私のこと入れてー!」という勢いで参加したのです。
後で知りましたが、団地女子会は「団地再生支援協会」という団体の中のタスクフォースで、そこには大学の先生やまちづくりの専門家、団地設計に関わってきた企業の方々もいました。「すごい世界に飛び込んじゃったな」とドキドキしましたが、皆さん本当に温かく迎えてくださって。そこから私の団地めぐりと学びが始まりました。
女子会では、全国の団地を見て歩いたり、管理組合の方々の話を聞いたり、お祭りの手伝いをしたり。子どもの頃の「団地=遊び場」というイメージが「団地=社会の一部」という実感へと変わっていきました。
ー今回のプロジェクトに参加することになった経緯を教えてください。

協会で出会っただんちぐみ(団地再生事業協同組合)の代表金丸典弘さんが、団地の空き家をフルリノベーションして若い世代に引き継ぐ取り組みをしていると知りました。「団地って、こうやって未来につなげていけるんだ!」とワクワクしました。
さらに、地元の女性建築士仲間が50代から一級建築士に挑戦したり、新しい事業を始めたりする姿にも背中を押されました。「やりたいなら、今やらなきゃ」と決心して、物件探しを始めました。不動産の知識はほぼゼロ(笑)。でも勢いで飛び込んで、最終的にたどりついたのが今回の花見川団地の住戸です。
懐かしいふるさとから得るまなびを糧に、団地のあたらしい価値を生み出していきたい
ーあらためて、花見川団地は、鈴木さんにとってどんな場所ですか?
私にとって団地は、「懐かしいふるさと」であり「未来への挑戦の舞台」です。もう一度ここで学びながら、自分の手で新しい価値を生み出していきたい。暮らしてみないとわからないことが、まだまだたくさんある気がしています。これからもチャンスがあれば、また団地のリノベーションに関わりたいと思っています。
後編につづきます。
≪information≫
鈴木さんが手掛けるリノベーションプロジェクト「凛-rin-」にご興味がある方は、団地roomsの物件ページより、お問合せ下さい。
《 お問い合わせ先 》
団地ルームズ「凛-rin-」(他サイトに接続)

この記事を書いた人

大泉早花(おおいずみ はやか)/ ライター・大学院生
学部の卒業設計では、多文化共生と地域連携による団地再生を提案したご縁で、団地女子会に参加。修士課程ではその研究をさらに発展させ、都市一極集中による高密な住環境とは異なる、団地が持つ豊かな環境を活かし、オルタナティブな住空間とコミュニティの創出について探究したいと考えています。趣味は街歩き、旅行のVlogをみること、映画鑑賞、読書、などなど。団地女子会メンバー。


