今回は、みなさんからご質問いただく「団地購入に関するあれこれ」のなかから、まずはじめに必ず気になる!という素朴な疑問をピックアップ。コンパクトなQ&A形式でお話ししたいと思います。
Q. 築50年過ぎてても大丈夫?
ズバリ、大丈夫。というのが回答です。
よく聞く50年という数字。これは、税法上の減価償却(建物の資産価値が0になる)の耐用年数が47年なのです。これは建物の物理的寿命とは関係ありません。
もちろん、管理状況によります。
鉄筋コンクリート構造の建物は、専門家によって意見が分かれますが、きちんとメンテナンスすれば、100年、120年耐え得ると言われています。
現在、100年間耐久マンションに向けて、外断熱改修工事などの改修工事を行っている団地があります。
分譲マンションは「管理を買う」と言われています。どんなに新しい物件もいずれは古くなります。中古の物件であれば、現在の管理状況を見て購入できる分、あんしんです。管理がきちんとしている物件を購入したいですね。
Q. 古い団地の耐震はどうなの?
団地の多くは壁構造といって、建物の重さを壁で支える設計です。壁構造で作られた鉄筋コンクリートの建物は、団地の多い阪神・淡路大震災でも増改築していないものは、一件も倒壊した建物がないと報告されています。(参考:「マンション耐震化マニュアル」平成 26 年 7 月再改訂 国土交通省)
昭和56年以降、耐震基準が変更されて新たに基礎部分の構造が加味されるようになり、旧耐震の建物は計算上、基礎・杭部分に関しては基準に満たないことが多いです。
一方、一次設計部分(建物部分)に関しては、旧耐震と新耐震では基準に変化はありませんので、建物部分は耐震基準を満たしているところが多く、住宅ローン減税等に使用する「耐震適合証明書」が発行できることが多いです。
Q. 人付き合いはたいへん?
意外にも、たいへんじゃないという声をよく聞きます。そもそも管理組合の役員や、近隣のトラブルは団地以外のマンションにもあるものです。
団地特有のものとしては、数ヶ月に一度みんなの外掃除や、お祭り、階段の掃除当番でしょうか。
これまで取材した中で、掃除については「いざという時のために顔見知りになっておきたいから掃除に参加する」という新しく入居してきた方や、「みんな元気か確認したくて」というお年寄りもいて、コミュニティ=煩わしいものではなさそうです。
隣近所の人と一切コミュニケーション取りたくないっていう方にはオススメできませんが、別に構わないという方には是非隣と上下の人と顔見知りになってみてください。
Q. どんな人が団地リノベーション物件を買っているの?
これまでご購入いただいた方は、若い単身の方や、赤ちゃんのいるご夫婦が多いです。また、ここ最近の団地リノベーション内覧会にいらっしゃる方は、既にマンションや戸建て暮らしの60代の男性・ご夫婦が増えてきています。
例えば、ご夫婦は「これから歳をとって、いずれどちらかが1人になる。その時に近所の人と繋がっていれば、安心できる」とのこと。若い単身の方は「2000万円以下で、毎月の返済負担は無理なく、自分の好きなこだわりのお部屋に住みたい」「一人暮らしだと、ある程度コミュニティがある方がいい」「いざという時の防犯や防災の面が、マンションより安心できる」というご意見も。
皆さん、リノベーションの内装に惹かれていらっしゃるのはもちろん、他のマンションより団地の方がお互いの顔が見えて、安心だからという理由もあるようです。
→リノベ団地をご購入された方にインタビューした記事はこちら
Q. 自治会と管理組合の違いがよくわからない…
どちらも、団地・マンションに限らず存在する組織で、
●自治会=任意加入。地域の防災・コミュニティの組織。
●管理組合=自動で加入。建物管理を行う組織。
自治会はマンションや戸建てに関係なく、地域の防災やゴミ出し、お祭りなどを行う任意加入の組織です。区市町村などの役所との繋がりは、地域の自治会にあり、例えば災害時には役所から自治会単位で救援物資が届きます。
一方、管理組合は、組合員が区分して所有する建物や敷地などを管理する組織です。マンションの一室を所有する人は皆、管理組合員となり、辞めることはできません。毎月の管理費や修繕積立金は管理組合に払います。実際は、管理組合が管理会社に管理を委託し、管理費などの徴収(出納関係)、管理人の派遣や清掃、建物のメンテナンス手配(エレベーターや排水管の清掃など)を行うことが多いです。
ちなみに、団地の管理委託を行う会社としては、日本総合住生活(通称JS)が1番大きく、UR賃貸や、分譲の団地の管理を多く請けています。
Q. 団地の魅力って?
私はこれまでUR賃貸住宅の現地案内所で団地の入居をあっせんしたり、分譲団地の賃貸や販売を行ったりしてきました。そんな中で団地住まいの方から頂いたご意見の多い順に紹介します。
●間隔が広く、公園に住んでいるような環境
国や地方公共団体などによって計画的に作られた団地は、ゆとりのある敷地に、棟間隔を十分に空けて建てられています。効率を重視しがちな現在ではとても建てられないような贅沢な環境で、敷地内には桜を始めとした四季折々の植栽、ベンチや公園(プレイロット)、テニスコートやプールなどがある団地もあります。
●陽当たり・通風が良好
ほとんどの物件が、東南・南・南西向きに建てられていて、陽当たりが良好です。また、築50年を超えた古い団地の間取りは間口が広くて南に面している部分が広く、間口が広い分、奥行きがなく、光が部屋の中まで入ります。お風呂やトイレ・洗面所にも窓があり、風が通りやすい間取りです。
●サステナブル&リーズナブル
新築住宅ではなく、既に建てられている中古の住宅をリノベーションして住むことで、空き家問題の解決や、高齢化する団地に若い人が住む循環型のサステナブルな住まい・コミュニティの継続が期待できます。
また既存住宅は、新築住宅に比べてリーズナブルなため、その分、自分のお気に入りの内装にお金をかけられることや、建物やコミュニティの管理状況(修繕状況や財務状況)のデータも知ることができるため、住んだ後にこんなはずではなかったということが起こりにくいのも利点です。
まとめると、
・人とのゆるやかなつながりを求める方
・リーズナブルな金額で、自分好みの内装のお部屋に住みたい方
・ゆとりのある敷地で豊かな植栽に囲まれて暮らしたい方
そんな方には、ぜひ団地を住まいとして選択肢に入れてほしいなと思います。
今回は、「団地購入に関するあれこれ」のなかから、まずはじめに必ず気になる!という素朴な疑問をピックアップしてお答えしました。
村上亜希枝(むらかみ・あきえ)/ライター
団地を愛する宅地建物取引士。多摩ニュータウンの不動産会社でお客様に団地を薦めているうちに、自身がすっかり団地好きに。現在は「 団地に住みたい人を、増やしたい!」を軸に、主に昭和期に建てられた団地の活性化に日々取り組む。趣味は団地巡り、山登り、アクセサリー作り。アキヱ企画代表。
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