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オレンジ色の建物に集まる地域と世界の笑顔。村上団地「ほっこり村上」がつむぐ、優しさと絆にあふれた最先端の地域交流

  • 1 日前
  • 読了時間: 9分



千葉県八千代市に広がる広大な「村上団地」

昭和の時代から地域を支え、緑豊かでどこか懐かしい景色が広がるこの大空間のなかに、地元住民から「オレンジ」の愛称で親しまれている鮮やかなオレンジ色の建物があります。

ここは、地域住民の主体的な支え合いによって運営されているコミュニティスペース「ほっこり村上」です。

今回は、この「オレンジ」の建物を舞台に繰り広げられている、国境や世代を超えたあたたかな地域交流のリアルな現場を取材してきました。団地の歴史が生んだ温もりと、最先端のグローバルな絆の物語をお届けします。


雨の日でも晴れやかな気分にしてくれる、鮮やかなオレンジ色の外観が目印。
雨の日でも晴れやかな気分にしてくれる、鮮やかなオレンジ色の外観が目印。

歴史ある「村上団地」と、みんなの居場所「ほっこり村上」の歩み

〇豊かな緑と住民の愛に育まれた「村上団地」

村上団地は、1976年に入居が開始され、高度経済成長期から多くの家族の暮らしを支えてきた、八千代市内でも歴史のある大規模な団地です。敷地内は歩行者専用道路や緑地が豊かに整備され、生活に必要な施設がコンパクトにまとまった、住民同士の顔が見えやすいアットホームな距離感が今も息づいています。


秋は銀杏並木が綺麗。
秋は銀杏並木が綺麗。

〇駐在所跡地から始まった「ほっこり村上」

そんな温かい団地のなかで、平成21年に団地の駐在所跡地を利用して誕生したのが、現在の「ほっこり村上」です。元々は「村上安心安全福祉センター」として設立され、地域に愛されて15周年を迎えたのを機に、現在の名称へと生まれ変わりました。

平日の午前中は「モーニングサロン」として1杯100円の美味しいコーヒーや紅茶を提供し、室内では体操、マンドリン、歌声サロン、カラオケといった住民主体のサークル活動が盛んに行われています。ここを運営しているのは、行政の職員でも福祉の専門家でもなく、なんと全員がボランティアとして集まった地域の皆様。無償の優しさと情熱で、誰もがふらっと立ち寄れる温かい居場所を維持し続けているのです。


敷地の一角にある美しく手入れされたお庭も素敵。ここには、ボランティアとして定期的にお庭を手入れしてくれる地域の方がいらっしゃいます。四季折々の花が咲き誇るその景色は住民の癒やしになっていること間違いなし。


色とりどりに咲き誇る花々。一つひとつに名前の札が添えられているところに、細やかな優しさを感じます。
色とりどりに咲き誇る花々。一つひとつに名前の札が添えられているところに、細やかな優しさを感じます。

苦境を乗り越えて 駄菓子屋さんが残した「子どもたちへの想い」

今でこそ高齢者の憩いの場としての印象が強い「ほっこり村上」ですが、実はかつては水曜日と土曜日の放課後に、団地の子どもたちのために「駄菓子屋さん」を開いていました。近隣の村上東小学校などの子どもたちが、学校帰りに小銭を握りしめて「オレンジ」に集まってくる、そんな光景が日常だったのです。消費税は取らず、子どもたちにお買い物の楽しさを知ってもらうための、ボランティアさんたちの愛にあふれた活動でした。

しかし近年、駄菓子業界を取り巻く環境は激変します。仕入れ値や物価がどんどん高騰し、これまで10円で買えていたものが13円に値上がりするなど、子どもたちに安価で提供することが難しくなっていきました。さらに、問屋さんからの仕入れ自体が厳しくなり、ボランティアさんたちが自力で都内の問屋まで直接買い出しに行かなければならない事態に。


「さすがに無償のボランティアの力だけで都内まで毎回買い出しに行くのは難しい……」


断腸の思いで、現在は駄菓子屋さんの営業を当面の間休止することを決めました。それでも、ボランティアのみなさんの根底にある「子どもたちや地域の人を笑顔にしたい」という想いは、今も形を変えてサロン活動のなかに脈々と受け継がれています。



「そこまでやる!?」毎回徹底される丁寧なイベント準備の舞台裏

「ほっこり村上」で開催されるイベントは、いつも笑い声が絶えません。その理由を裏付ける、ボランティアさんたちの驚くべき丁寧な準備の様子を目撃しました。

例えば地域交流イベントやサロンが開かれる際、ボランティアのみなさんは事前に「どこに誰が座るか」を座席表で細かくシミュレーションします。そして、椅子の一つひとつに、名前を印刷した紙を貼って席を指定しておくのです。

これほど徹底した準備には深い理由があります。

「初めて参加する人や、少しおしゃべりが苦手な高齢者の方が、ドアを開けた瞬間に『どこに座ればいいんだろう……』と不安になって緊張してしまわないように」

「あの人とこの人を同じテーブルにしたら、きっとお話が弾んで楽しい時間を過ごせるはず」

そんな、一人ひとりの顔を思い浮かべた細やかなおもてなしの計算が、すべての席に隠されているのです。この徹底された思いやりがあるからこそ、「オレンジ」の扉を開けた人は誰もがすぐに緊張を解き、あたたかな空気感に包まれることができます。



ミャンマー、ネパール、スリランカ……団地が「インターナショナル」な交流の場に!

そして今、「ほっこり村上」は高齢者だけのサロンに留まらず、驚くほどグローバルでインターナショナルな広がりを見せています。取材に訪れたこの日は、地元の「理知の杜日本語学校千葉校」との定期交流会が開催されていました。

「オレンジ」の中に一歩足を踏み入れると、地元の日本のおじいちゃん、おばあちゃんたちと、ミャンマー、ネパール、スリランカなどから来日した東南アジア・南アジア出身の若き学生たちが、同じテーブルを囲んで賑やかにおしゃべりを楽しんでいました。

世代も、育った文化も、国籍も全く違う彼らですが、ボランティアさんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、スマートフォンの写真を見せ合って家族の話をしたり、お互いの国の文化を教え合ったり。言葉の壁を軽々と飛び越えて、まるで本当の孫と祖父母のように肩を並べて笑い合う姿が、あちらこちらのテーブルで見られました。


世代も文化もごちゃまぜ。和気あいあいと話に花が咲きます。
世代も文化もごちゃまぜ。和気あいあいと話に花が咲きます。

この交流は、単なる一過性のイベントではありません。回を重ねるごとに地域住民と留学生たちの絆は深まり、なんと日本語学校の生徒たちの「卒業式」には、ほっこりむらかみのボランティアや地域のみなさんがお祝いに駆けつけたこともあるのだそう。 異国の地で慣れない生活を送りながら勉強に励む若者たちにとって、「ほっこり村上」で出会った団地のおじいちゃん、おばあちゃんたちは、日本における「本物の家族」のような温かい心の拠り所になっているのでしょう。


「また明日も来たくなる」、3つの優しい動機づけ

この居場所が15年以上にわたって愛され、高齢者のみなさんが元気に足を運び続けられるのには、ボランティアのみなさんによる「歩くこと・集まること」を楽しく長続きさせる秘訣がありました。


① 徹底された事前の席決め

先述の通り、入ってきた瞬間に誰も孤立させないための座席の工夫が、リピートしたくなる安心感を生んでいます。

② 歩くのが楽しくなる「ウォーキングスタンプラリー」

高齢者のみなさんが外に出て歩くきっかけを作るため、地域をめぐるミニウォーキングの工夫がされています。可愛いオリジナルのスタンプ帳に、地域に設置されたスポットでスタンプを集めると、サロンのコーヒーが1杯サービスに!

健康のための歩行を、ゲーム感覚で楽しく続けられる素晴らしいアイデアです。

 

村上団地周辺のなじみの場所がスタンプの設置ポイントになっています。
村上団地周辺のなじみの場所がスタンプの設置ポイントになっています。


だスタンプを集めるだけでなく、自分の健康目標を書き込める優しい工夫も。
だスタンプを集めるだけでなく、自分の健康目標を書き込める優しい工夫も。

③ 外へ出る動機づけになる「コーヒーチケット(綴り券)」

大人気のコーヒー(1杯100円)には、11枚綴り(1枚分サービス)のお得なチケットが用意されています。単にお得というだけでなく、「チケットを買ったんだから、また行かなきゃね」「今週もあそこへ行ってチケットを使おう」という、高齢者が家から一歩外へ出るための動機づけとして機能しています。



おわりに

今回取材した「ほっこり村上」は村上東小学校の前にあるため、地元民だけれども学区が違った私にとっては、たまに車で前を通り過ぎるときに「あ、あのオレンジ色の建物ね」と横目で眺めるくらいの存在でした。地元の人たちが親しみを込めて「オレンジ」と呼ぶあの場所。けれど、わざわざ車を止めて中を覗くこともなかったので、「一体中で何をやっている場所なんだろう?」という、知っているけれど何だかよくわからない不思議な存在のままでした。

そんな私が今回、一人の地元住民として初めて、「オレンジ」の扉を開けて中に広がる光景を目にしたとき、心地よい衝撃と感動に包まれました。そこには、ただ車で通り過ぎていたときには想像もつかなかった、新しく、そして熱いグローバルな交流が生まれていたからです。

かつての団地といえば「昔ながらの地域のつながり」というイメージが強かったかもしれません。しかし、日本の団地のおじいちゃん、おばあちゃんたちが、ミャンマーやネパール、スリランカから来た若者たちとテーブルを囲んでスマートフォンの写真を見せ合い、笑い合っている姿は、これからの時代を象徴する「全く新しい、希望に満ちた団地の風景」そのものでした。

そして何より私の心を打ったのは、この奇跡のようなコミュニティを、誰に頼まれるでもなく「自分たちの手で活性化させよう」と日々努力を重ねている、ボランティアのみなさんの圧倒的な優しさと情熱です。

駄菓子屋さんの休止という苦境を乗り越えながらも、見えないところで丁寧な準備や工夫を積み重ねているからこそ、国籍も世代も関係なく、みんなが自然と笑顔になれるのだと痛感させられました。

少子高齢化が進むこれからの社会において、こうした温かい活動の輪が、この村上団地からもっともっと地域へ、そして全国へと広がっていってほしいと心から願わずにはいられません。

車窓から見かけるだけだった、あのオレンジ色の建物のなか。そこには、手入れの行き届いた美しいお庭と、温かいコーヒー、環境を変えて飛び込んできた若者たちと地域をつなぐ、最高の笑顔が待っていました。地元にこんなにも誇らしく、愛おしい居場所があることを知ることができて、胸がいっぱいになった取材でした。

「ほっこり村上」は、ただのコミュニティスペースではありません。地域の人がいつまでも寂しさを知らず、元気に、世界とつながりながら生きていくための、愛と知恵が詰まった場所です。みなさんもぜひ、この温かい空気感に触れてみませんか?


オレンジ色の建物に集まる笑顔の源。「ほっこり村上」をあたたかく守る、地域のボランティアのみなさん。
オレンジ色の建物に集まる笑顔の源。「ほっこり村上」をあたたかく守る、地域のボランティアのみなさん。


【information】


「ほっこり村上」へのアクセスや活動日時の詳細などは、こちらの公式情報をご覧ください!


「ほっこり村上」概要


取材当日の交流の様子


「オレンジ」のFacebookアカウント




●おまけ

取材当日、入り口にこんな張り紙を見つけました。私たちダンチジャーナルも歓迎していただいてとても心がほっこりしました。


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